萎縮性胃炎とは?胃がんとの関係やピロリ菌の検査・治療を解説
萎縮性胃炎とは?胃がんとの関係やピロリ菌の検査・治療を解説
健康診断や人間ドックで胃カメラを受けた際、結果用紙に「萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)」と書かれていたことはありませんか?
「胃が萎縮するって、どういうこと?」
「胃がんになりやすいの?」
「ピロリ菌を除菌したことがあるけれど、大丈夫?」
このような疑問や不安を感じる方もいらっしゃると思います。
萎縮性胃炎は、それ自体が胃がんというわけではありません。 しかし、胃がんの発生リスクと関係する重要な所見の一つです。
今回は、萎縮性胃炎とはどのような状態なのか、ピロリ菌や胃がんとの関係、検査・治療について、消化器内科医がわかりやすく解説します。
萎縮性胃炎とは?
胃の内側は、胃酸や消化液などを分泌する働きを持つ粘膜で覆われています。
この胃の粘膜に慢性的な炎症が続くと、本来ある胃の腺が減少し、粘膜が薄くなることがあります。
このような変化を萎縮性胃炎と呼びます。
胃カメラでは、胃の粘膜の色や血管の見え方などから、萎縮性胃炎の有無や広がりを評価します。
萎縮性胃炎は自覚症状がないことも多く、健康診断などで初めて指摘される場合があります。
萎縮性胃炎の原因はピロリ菌?
日本では、萎縮性胃炎の主な原因の一つがヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)への感染です。
ピロリ菌は胃の粘膜にすみつく細菌で、感染すると慢性的な胃炎を引き起こすことがあります。
炎症が長期間続くと、胃の粘膜の萎縮が徐々に進行する場合があります。
さらに、一部では胃の粘膜が腸の粘膜に似た性質に変化する「腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)」がみられることもあります。
ただし、萎縮性胃炎の原因がすべてピロリ菌というわけではありません。自己免疫性胃炎など、別の原因が関係する場合もあります。
また、過去にピロリ菌を除菌した方でも、萎縮性胃炎の所見が残ることがあります。
萎縮性胃炎があると胃がんになる?
萎縮性胃炎があるからといって、必ず胃がんになるわけではありません。
しかし、萎縮性胃炎は胃がんの発生リスクと関係することが知られています。
特に、ピロリ菌による慢性的な炎症が長く続き、胃の粘膜の萎縮が広い範囲に及んでいる場合には、胃がんのリスクが高くなる傾向があります。
つまり、同じ「萎縮性胃炎」という診断でも、萎縮の程度や広がりによって、注意すべき程度は異なります。
胃カメラでは、萎縮性胃炎の有無だけでなく、胃のどの範囲まで変化が広がっているかも重要な情報になります。
健診結果に萎縮性胃炎と書かれていた場合は、必要以上に心配するのではなく、ピロリ菌の感染状況や胃カメラの所見を確認することが大切です。
ピロリ菌の検査は受けた方がいい?
萎縮性胃炎を指摘された方で、これまでピロリ菌の検査を受けたことがない場合には、感染の有無を調べることが重要です。
ピロリ菌の検査には、次のような方法があります。
- 尿素呼気試験(息を調べる検査)
- 便中抗原検査
- 血液などによる抗体検査
- 胃カメラの際に採取した組織を用いる検査
どの検査が適しているかは、過去の除菌歴や服薬状況などによって異なります。
例えば、胃酸を抑える薬の種類によっては、検査結果に影響することがあります。
また、過去に除菌した方では、抗体検査が陽性であっても、現在ピロリ菌に感染しているとは限りません。
そのため、検査方法については医師と相談することが大切です。
ピロリ菌が見つかったら、治療は必要?
ピロリ菌への感染が確認された場合には、一般的に除菌治療が勧められます。
除菌治療では、通常、胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬を組み合わせて、7日間服用します。
治療後は、ピロリ菌がきちんと除菌できたかを確認する検査が必要です。
除菌に成功すると、胃の炎症が改善し、将来の胃がん発生リスクを下げることが期待できます。
ただし、すでに進行した萎縮性胃炎が完全に元に戻るとは限りません。
なお、日本の保険診療でピロリ菌の検査・除菌治療を行う際には、胃カメラによる診断など、所定の条件があります。
ピロリ菌を除菌したら、もう胃がんの心配はない?
ここは特に知っていただきたいポイントです。
ピロリ菌の除菌に成功しても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありません。
除菌によって胃がんの発生リスクは低下しますが、それまでの感染によって胃の粘膜に生じた変化が残ることがあります。
特に、除菌前から萎縮性胃炎が進んでいた方では、除菌後も胃がんが発生する可能性があります。
そのため、「以前ピロリ菌を除菌したから、もう胃カメラは必要ない」とは限りません。
除菌後も、ご自身の胃の状態に応じて、定期的な検査を検討することが大切です。
萎縮性胃炎と言われたら、毎年胃カメラが必要?
萎縮性胃炎がある方では、胃がんの早期発見を目的として、定期的に胃カメラを受けることが大切です。
特に、ピロリ菌を除菌した後でも胃がんのリスクがゼロになるわけではないため、除菌に成功した後も経過観察が重要です。
胃カメラの適切な検査間隔は、萎縮性胃炎の程度やピロリ菌の感染歴、年齢、過去の検査結果などによって異なります。
当院では、胃の病気を早期に発見することを重視し、前回の胃カメラで明らかな異常がなかった方にも、基本的に年1回の検査をご案内しています。
ただし、年1回の胃カメラがすべての方に医学的に必要とされているわけではありません。検査の必要性や間隔については、それぞれの状況やご希望も踏まえてご相談しています。
なお、症状や病歴などによって、保険診療で検査を行う場合と、健康診断・自費検診として受けていただく場合があります。
萎縮性胃炎には症状がある?
萎縮性胃炎そのものには、特徴的な自覚症状がないことも多くあります。
一方で、胃もたれや胃の不快感などを感じる方もいます。
ただし、こうした症状が必ずしも萎縮性胃炎によって起こっているとは限りません。
また、症状がないからといって、萎縮性胃炎が軽いとは判断できません。
胃の状態を確認するには、必要に応じて胃カメラなどの検査を受けることが大切です。
なお、黒い便が出る、吐血する、意図しない体重減少がある、食事が飲み込みにくいなどの症状がある場合には、早めに医療機関を受診してください。
まとめ:萎縮性胃炎は、胃の状態を知るための大切なサイン
萎縮性胃炎は、胃の粘膜に慢性的な炎症が続き、胃の腺が減少することで生じる変化です。
特に覚えておいていただきたいのは、次の3点です。
- 萎縮性胃炎そのものは胃がんではありませんが、胃がんのリスクと関係します。
- ピロリ菌の感染が確認された場合には、除菌治療が重要です。
- ピロリ菌を除菌した後も、胃の状態に応じた定期的な胃カメラが大切です。
前田内科消化器科では、萎縮性胃炎やピロリ菌に関するご相談、必要に応じた胃カメラ検査を行っています。
また、当院では胃の病気の早期発見を重視し、前回の検査で異常がなかった方にも、基本的に年1回の胃カメラをご案内しています。
健診や人間ドックで萎縮性胃炎を指摘された方や、胃カメラの検査間隔について気になる方は、お気軽にご相談ください。
参考資料
- 日本消化器内視鏡学会「ピロリ菌感染は内視鏡検査でわかりますか?」
- 日本消化器内視鏡学会「ピロリ菌を除菌しましたが、その後胃カメラ検査を受ける必要がありますか?」
- 日本消化器内視鏡学会「胃内視鏡検査は何年に1回受ければいいですか?」
- 日本ヘリコバクター学会『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024』
- 兒玉雅明ほか「Helicobacter pylori除菌治療後の内視鏡診療の役割と重要性」日本消化器内視鏡学会雑誌.2024;66:373–384.