コラム

バレット食道とは?がんになるの?健診で指摘された方へ

バレット食道とは?がんになるの?健診で指摘された方へ

健康診断や人間ドックで胃カメラを受けた際、結果用紙に「バレット食道」と書かれていたことはありませんか?

「聞いたことのない病名だけど、何かの病気?」
「食道がんになる可能性があると聞いて心配……」
「症状はないけれど、治療が必要なの?」

このような疑問を持つ方もいらっしゃると思います。

バレット食道は、それ自体ががんというわけではありません。 また、バレット食道と診断された方すべてが、同じように食道がんのリスクを抱えているわけでもありません。

今回は、バレット食道とはどのような状態なのか、がんとの関係や検査・治療の必要性について、消化器内科医がわかりやすく解説します。

バレット食道とは?

食道は、口から入った食べ物を胃へ運ぶための管です。

通常、食道の内側は「扁平上皮(へんぺいじょうひ)」という粘膜で覆われています。

ところが、胃酸などが食道へ逆流する影響などによって、食道の下の方の粘膜が、胃の粘膜に似た「円柱上皮(えんちゅうじょうひ)」という種類の粘膜に置き換わることがあります。

このような変化をバレット食道と呼びます。

少し難しく感じるかもしれませんが、簡単にいうと、食道と胃の境目付近で、食道の粘膜の一部が胃に似た粘膜に変化している状態です。

胃カメラで確認されることが多く、自覚症状がないまま健診で初めて指摘される方もいます。

バレット食道は、がんなの?

まず知っていただきたいのは、バレット食道そのものは、がんではないということです。

ただし、バレット食道は「食道腺がん」という種類の食道がんが発生する場所になることが知られています。

そのため、胃カメラでバレット食道が見つかった場合には、将来のがんのリスクについて考える必要があります。

とはいえ、バレット食道が見つかったからといって、必ずがんになるわけではありません。

特に重要なのが、バレット食道の長さです。

バレット食道は「長さ」によってがんのリスクが違う

バレット食道には、ごく短いものから、食道の広い範囲に及ぶものまであります。

日本では、胃カメラで確認できる非常に短い変化もバレット食道と診断されることがあるため、健診で指摘される方も少なくありません。

一方、研究では、バレット食道が長くなるほど食道腺がんの発生リスクが高くなることが報告されています。

2024年に発表された日本の多施設研究では、約3万3千人の胃カメラ受診者を追跡し、バレット食道の長さと食道腺がんの発生について調べています。

その結果、1cm未満の非常に短いバレット食道では、食道腺がんの発生頻度が極めて低いことが示されました。

一方で、3cm以上の長いバレット食道では、短いものと比較して発生リスクが高い結果でした。

つまり、健診結果に同じ「バレット食道」と書かれていても、その長さによって注意すべき程度が異なります。

「バレット食道」と書かれているだけで、過度に心配する必要はありません。 まずは、どの程度の長さなのか、胃カメラでどのような所見があったのかを確認することが大切です。

バレット食道になると症状は出る?

バレット食道そのものには、特徴的な自覚症状がないことが多いとされています。

一方、バレット食道は胃酸などの逆流と関係するため、胃食道逆流症を合併している方では、次のような症状がみられることがあります。

  • 胸やけがする
  • 酸っぱいものが口まで上がってくる
  • 食後や横になったときに胸のあたりが不快になる

ただし、こうした症状がない方でもバレット食道が見つかることがあります。

また、胸やけの強さだけでバレット食道の長さや、がんのリスクを判断することはできません。

バレット食道には治療が必要?

バレット食道と診断されても、必ずしも治療が必要になるわけではありません。

胸やけなどの逆流症状がある場合や、逆流性食道炎を合併している場合には、胃酸の分泌を抑える薬などを使用することがあります。

また、食べ過ぎを避ける、就寝直前の食事を控える、過体重の場合には減量を心がけるといった生活習慣の見直しも役立ちます。

ただし、胃酸を抑える薬を飲めば、バレット食道の粘膜が必ず元に戻るというわけではありません。

なお、胃カメラや組織検査で、がんやその前段階にあたる変化が見つかった場合には、専門的な検査や内視鏡治療などが必要になることがあります。

バレット食道と言われたら、毎年胃カメラを受けるべき?

「バレット食道と書かれていたので、毎年胃カメラを受けた方がいいですか?」という疑問もあると思います。

実際には、すべての方に一律で毎年の胃カメラが必要というわけではありません。

バレット食道の長さ、粘膜の状態、組織検査の結果、これまでの検査歴などによって、経過観察の必要性や検査間隔は異なります。

特に、1cm未満の非常に短いバレット食道については、がんの発生リスクが極めて低いことが報告されており、欧米のガイドラインでは、こうした短い変化を通常のバレット食道の診断や定期的な経過観察の対象に含めていません。

ただし、日本と欧米ではバレット食道の診断基準に違いがあるため、海外の検査間隔をそのまま日本のすべての患者さんに当てはめることはできません。

健診結果にバレット食道と書かれていた場合は、過去の胃カメラの結果も含めて医師に相談し、ご自身に合った検査方針を確認しましょう。

まとめ:バレット食道と言われても、まずは落ち着いて確認を

バレット食道は、食道の下の方の粘膜が、胃の粘膜に似た状態に変化しているものです。

覚えておいていただきたいのは、次の3点です。

  • バレット食道そのものは、がんではありません。
  • がんのリスクはバレット食道の長さによって異なり、非常に短いものではリスクが極めて低いことが報告されています。
  • 胃カメラによる経過観察が必要かどうかは、所見や検査歴などを踏まえて判断します。

健診結果に見慣れない病名が書かれていると、不安になるものです。

しかし、「バレット食道」という言葉だけで判断するのではなく、実際の胃カメラの所見を確認することが大切です。

前田内科消化器科では、健診や人間ドックで指摘された食道・胃の異常についてのご相談や、必要に応じた胃カメラ検査を行っています。

バレット食道について気になることがあれば、健診結果をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Fukuda S, et al. Cancer risk by length of Barrett’s esophagus in Japanese population: a nationwide multicenter retrospective cohort study. J Gastroenterol. 2024;59:887–895. DOI: 10.1007/s00535-024-02139-2.
  2. Shaheen NJ, et al. Diagnosis and Management of Barrett’s Esophagus: An Updated ACG Guideline. Am J Gastroenterol. 2022;117:559–587. DOI: 10.14309/ajg.0000000000001680.
  3. 日本消化器病学会.健康情報誌「消化器のひろば」No.15「バレット食道って何ですか?」