下痢が続く原因は?潰瘍性大腸炎やクローン病の可能性も
下痢が続く原因は?潰瘍性大腸炎やクローン病の可能性も
「下痢が何週間も続いている」
「お腹が痛くて、何度もトイレに行く」
「整腸剤を飲んでいるけれど、なかなか改善しない」
このような症状でお困りではありませんか?
下痢は比較的よくある症状ですが、長く続く場合には、単なる胃腸の不調ではなく、病気が隠れていることもあります。
その一つが、**潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)**です。
今回は、下痢が続く原因や注意したい症状、必要な検査について、消化器内科医がわかりやすく解説します。
下痢が続くのはなぜ?
下痢にはさまざまな原因があります。
ウイルスや細菌による感染性胃腸炎のように、数日程度で改善するものもあれば、数週間から数か月にわたって症状が続くものもあります。
一般的に、**4週間以上続く下痢は「慢性下痢」**と呼ばれます。
ただし、4週間未満であっても、血便や強い腹痛、発熱などがある場合には注意が必要です。
下痢が続く場合には、症状の期間だけでなく、便の状態や腹痛の有無、体重の変化なども重要な手がかりになります。
下痢が長く続く主な原因
① 過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、腹痛と便通の異常が繰り返し起こる病気です。
腸に明らかな炎症や腫瘍などが見つからなくても、下痢や便秘、お腹の張りなどが続くことがあります。
ストレスや生活リズムが症状に関係する場合もありますが、単に「ストレスが原因の病気」というわけではありません。
なお、過敏性腸症候群と診断する際には、症状や年齢などに応じて、ほかの病気が隠れていないかを確認することが大切です。
② 炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患は、腸に慢性的な炎症が起こる病気で、主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2つがあります。
下痢や腹痛、血便などが続くことがあり、症状が良くなったり悪くなったりする場合もあります。
比較的若い年代で発症することが多いものの、どの年代でも発症する可能性があります。
IBDについては、次の項目で詳しく説明します。
③ 感染症
細菌や寄生虫などによる感染症でも、下痢が長引くことがあります。
また、抗菌薬の使用後に起こるクロストリジオイデス・ディフィシル感染症などにも注意が必要です。
最近の海外渡航歴、食事歴、抗菌薬の使用歴などが診断の手がかりになります。
④ 薬の影響
薬の副作用によって下痢が起こることもあります。
例えば、抗菌薬、糖尿病治療薬の一部、マグネシウムを含む薬、下剤などが原因になる場合があります。
服用中の薬が関係している可能性があるため、診察時にはお薬手帳などを確認することが大切です。
⑤ その他の病気
そのほかにも、次のような原因が考えられます。
- 乳糖不耐症など、食べ物の消化・吸収に関係する問題
- 甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患
- 顕微鏡的大腸炎
- 大腸がんなどの腫瘍性疾患
このように、長引く下痢の原因は一つではありません。
潰瘍性大腸炎・クローン病とは?
潰瘍性大腸炎とクローン病は、どちらも腸に慢性的な炎症を起こす病気です。
原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や免疫の働き、腸内環境などが複雑に関係していると考えられています。
潰瘍性大腸炎
主に大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。
代表的な症状には、下痢、血便、腹痛、便意があるのに少量しか出ないといった症状があります。
炎症の程度や範囲によっては、血便が目立たず、下痢や便通の変化が中心となることもあります。
クローン病
口から肛門までの消化管のさまざまな場所に炎症が起こり得る病気です。
特に小腸や大腸に炎症がみられることが多く、下痢、腹痛、体重減少などが主な症状です。
また、肛門周囲に膿がたまる、痔ろうができるといった症状がきっかけで発見される場合もあります。
どちらの病気も、早期に診断し、適切な治療につなげることが重要です。
こんな下痢には注意が必要
下痢が続いている方のうち、特に次のような症状がある場合には、医療機関への相談をお勧めします。
- 血便が出る
- 下痢が続き、体重が減ってきた
- 夜中に下痢で目が覚める
- 発熱や腹痛を繰り返す
- 下痢とともに強い疲労感がある
- 下痢が何週間も改善しない
こうした症状はIBDに限らず、感染症やその他の病気でも起こります。
また、血便や体重減少がなくても、IBDなどの病気が隠れている場合があります。
「血が出ていないから大丈夫」「若いから大きな病気ではない」と自己判断せず、症状が続く場合には一度相談することが大切です。
なお、激しい腹痛、大量の血便、強い脱水症状などがある場合には、速やかな受診が必要です。
下痢が続く場合、どんな検査をする?
下痢の原因を調べるためには、症状や経過に応じて検査を組み合わせます。
血液検査
貧血や炎症の程度、栄養状態などを確認します。
ただし、血液検査で炎症反応が正常でも、IBDを完全に否定できるわけではありません。
便検査
感染症の原因となる細菌などを調べるほか、必要に応じて便中カルプロテクチンを測定する場合があります。
便中カルプロテクチンは、腸の炎症を反映する指標の一つで、IBDなどの炎症性疾患を疑う際や、病状を評価する際に役立ちます。
ただし、値が高いからといってIBDと確定するわけではなく、感染症などでも上昇することがあります。
大腸カメラ
大腸の粘膜を直接観察し、炎症や潰瘍、ポリープ、腫瘍などがないかを確認します。
必要に応じて組織の一部を採取し、顕微鏡で調べることもあります。
潰瘍性大腸炎やクローン病の診断において、大腸カメラは重要な検査の一つです。
クローン病が疑われる場合には、小腸の検査など、追加の検査が必要になることもあります。
下痢が続いたら、すぐに大腸カメラが必要?
下痢が続く方すべてに、最初から大腸カメラが必要というわけではありません。
症状の期間や年齢、血便の有無、体重減少、血液検査の結果などを踏まえて、必要性を判断します。
一方で、血便や体重減少などの症状がある場合や、IBDなどの病気が疑われる場合には、大腸カメラが重要になります。
「検査を受けるほどではないかもしれない」と迷っている場合でも、まずは診察で相談していただければと思います。
まとめ:長引く下痢を自己判断で放置しないことが大切
下痢が続く原因には、過敏性腸症候群、感染症、薬の影響など、さまざまなものがあります。
その中には、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)が隠れている場合もあります。
特に覚えておいていただきたいのは、次の3点です。
- 4週間以上続く下痢は、慢性下痢として原因を確認することが大切です。
- 血便、体重減少、夜間の下痢などがある場合には注意が必要です。
- IBDが疑われる場合には、便検査や大腸カメラなどを組み合わせて診断します。
前田内科消化器科では、大学病院で炎症性腸疾患(IBD)の診療に携わってきた、日本炎症性腸疾患学会認定IBD専門医が、長引く下痢や血便などのご相談に対応しています。
必要に応じて血液検査や便検査、大腸カメラなどを行い、症状の原因を調べます。
下痢がなかなか改善しない方や、潰瘍性大腸炎・クローン病が心配な方は、お気軽にご相談ください。
参考資料
- 日本消化器病学会『慢性下痢症診療ガイドライン2023』
- 日本消化器病学会『炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)』
- 厚生労働科学研究費補助金 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針』