コラム

クローン病とは?症状・原因・検査・治療をわかりやすく解説

クローン病とは?症状・原因・検査・治療をわかりやすく解説

「下痢や腹痛が何週間も続いている」
「食事をするとお腹が痛くなる」
「痔ろうを繰り返しているけれど、腸の病気と関係があるの?」

このような症状の背景に、クローン病という病気が隠れていることがあります。

クローン病は、主に小腸や大腸に慢性的な炎症が起こる病気です。比較的若い年代で発症することが多く、症状が良くなったり悪くなったりする特徴があります。

近年は治療の選択肢が増えており、適切な治療によって病状をコントロールしながら生活している方も多くいます。

今回は、クローン病の症状や原因、検査、治療について、消化器内科医がわかりやすく解説します。

クローン病とは?

クローン病は、潰瘍性大腸炎と同じく、炎症性腸疾患(IBD)に分類される病気です。

潰瘍性大腸炎が主に大腸の粘膜に炎症を起こすのに対し、クローン病は口から肛門まで、消化管のさまざまな場所に炎症が起こる可能性があります。

特に炎症が起こりやすいのは、小腸の終わりの部分(回腸)や大腸です。

また、炎症のある部分と正常な部分が交互に存在することや、炎症が腸の壁の深い部分まで及ぶことも特徴です。

炎症が起こる場所によって、小腸型、小腸大腸型、大腸型などに分類されます。

クローン病は国の指定難病の一つですが、指定難病だからといって、すべての方が重症になるわけではありません。

病状に合った治療を続けることで、長期間安定した状態を維持できる方もいます。

クローン病の主な症状

クローン病では、炎症が起こる場所や程度によって、さまざまな症状が現れます。

代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 下痢が長く続く
  • 腹痛を繰り返す
  • 体重が減る
  • 発熱や倦怠感がある
  • 食欲が低下する
  • 血便が出る
  • 肛門の痛みや腫れ、痔ろうがある

ただし、すべての患者さんに下痢や血便が現れるわけではありません。

例えば、小腸に炎症がある場合には、腹痛や体重減少が目立ち、血便はみられないこともあります。

また、子どもでは体重増加の不良や成長の遅れが、病気に気づくきっかけになる場合もあります。

痔ろうや肛門の腫れもクローン病の症状?

クローン病では、腸の症状だけでなく、肛門の周囲に病変が生じることがあります。

その代表的なものが**痔ろう(じろう)**です。

痔ろうは、肛門の周囲に細いトンネルのような通り道ができ、膿が出たり、腫れや痛みを繰り返したりする状態です。

一般的な痔ろうでも同様の症状は起こりますが、クローン病に伴う痔ろうでは、複雑な形になったり、治療しても再発したりすることがあります。

特に、若い方で痔ろうを繰り返している場合や、下痢・腹痛・体重減少などを伴う場合には、クローン病の可能性も考える必要があります。

肛門の症状が先に現れ、その後の検査でクローン病と診断されることもあります。

痔ろうがあるからといって必ずクローン病というわけではありませんが、気になる症状があれば相談することが大切です。

クローン病の原因は?

クローン病の原因は、現在も完全には解明されていません。

遺伝的な要因、免疫の働き、腸内細菌、環境要因などが複雑に関係していると考えられています。

また、喫煙はクローン病の発症や病状の悪化と関連することが知られています。

一方で、特定の食べ物やストレスだけが原因で発症する病気ではありません。

クローン病は人から人へ感染する病気でもありません。

クローン病はどうやって診断する?

クローン病の診断では、症状や経過を確認したうえで、血液検査、便検査、内視鏡検査、画像検査などを組み合わせます。

血液検査

炎症反応や貧血、栄養状態などを確認します。

クローン病では、炎症によるCRPの上昇や、鉄不足などによる貧血、低栄養がみられることがあります。

ただし、炎症があっても血液検査で明らかな異常が出ない場合があり、検査結果だけで病気を否定することはできません。

便検査

感染性腸炎など、似た症状を起こす病気との区別に役立ちます。

また、必要に応じて便中カルプロテクチンを測定することがあります。

便中カルプロテクチンは、腸の炎症を反映する指標の一つです。

ただし、クローン病だけで上昇するものではなく、病変の場所によっては炎症を十分に反映しないこともあります。

大腸カメラ

大腸や小腸の終わりの部分を観察し、炎症や潰瘍がないかを確認します。

クローン病では、縦に長い潰瘍(縦走潰瘍)や、粘膜が敷石のように見える変化(敷石像)などがみられることがあります。

必要に応じて組織を採取し、顕微鏡で調べます。

ただし、特徴的な所見が必ず見つかるわけではなく、ほかの病気との区別も重要です。

小腸の検査

クローン病では、大腸カメラだけでは観察できない小腸に病変があることもあります。

そのため、必要に応じてCTやMRI、小腸内視鏡、カプセル内視鏡などを組み合わせて調べます。

なお、腸が狭くなっている可能性がある場合には、カプセル内視鏡が腸内にとどまる危険性があるため、事前の評価が必要です。

クローン病では、なぜ腸が狭くなることがあるの?

クローン病では、炎症が長く続くことなどによって、腸の壁が厚くなったり、硬くなったりする場合があります。

その結果、腸の内側が狭くなることを**狭窄(きょうさく)**と呼びます。

狭窄があると、食後の腹痛やお腹の張り、吐き気などが起こることがあります。

また、炎症が腸の壁を深く傷つけることで、腸とほかの腸管や臓器との間に異常な通り道(瘻孔)ができたり、膿がたまる(膿瘍)こともあります。

このような合併症がある場合には、薬物治療だけでなく、内視鏡的な治療や手術などが必要になることがあります。

特に、強い腹痛や繰り返す嘔吐、お腹の強い張りなどがある場合には、腸閉塞の可能性もあるため、速やかな受診が必要です。

クローン病は治る病気?

クローン病は、現時点では完全に治癒させる治療法が確立されていない慢性疾患です。

しかし、適切な治療によって炎症を抑え、症状の落ち着いた状態を長く維持することは十分に期待できます。

IBDの診療では、炎症が強く症状が現れている時期を「活動期」、炎症が落ち着いた状態を「寛解期」と呼びます。

治療では、まず炎症を抑えて寛解に導き、その後も再び悪化しないように維持することを目指します。

また、近年は症状を改善させるだけでなく、内視鏡などで確認できる腸の炎症をできるだけ抑えることも重要な治療目標になっています。

クローン病にはどんな治療がある?

治療は、炎症の程度や場所、狭窄・痔ろうなどの合併症、これまでの治療歴などを踏まえて選択します。

栄養療法

クローン病では、栄養療法が治療の一つとして用いられます。

専用の栄養剤を利用することで、必要な栄養を補いながら、腸の炎症や症状の改善を目指します。

特に小児では、栄養療法が重要な治療選択肢になります。

成人でも病状や栄養状態に応じて、薬物療法と組み合わせる場合があります。

ステロイド

炎症が強い場合などに、短期間使用することがあります。

炎症を抑える効果が期待できますが、長期間の使用では副作用が問題となるため、原則として寛解を維持する目的では使用しません。

免疫調節薬

アザチオプリンなど、免疫の働きを調整する薬を使用する場合があります。

治療中は血液検査などによる副作用の確認が必要です。

生物学的製剤・分子標的薬

中等症から重症のクローン病などでは、生物学的製剤や分子標的薬が治療の中心となることがあります。

これらは炎症に関わる特定の物質や免疫の働きを標的とする薬で、点滴、皮下注射、飲み薬など、さまざまな種類があります。

近年は治療の選択肢が増えており、病状や合併症、治療歴などを踏まえて適切な薬を選択します。

手術

腸の狭窄や腸閉塞、膿瘍、瘻孔などの合併症がある場合や、薬物治療で十分に改善しない場合には、手術が必要になることがあります。

ただし、手術で病変のある部分を切除しても、別の場所などに再び炎症が起こる可能性があるため、術後も継続的な管理が重要です。

クローン病では食事制限が必要?

クローン病と診断されると、「好きなものが食べられなくなるのでは?」と心配される方も多いと思います。

しかし、すべての患者さんに共通する厳しい食事制限が必要というわけではありません。

病状が落ち着いている場合には、栄養バランスを意識しながら、ご自身の体調に合った食事を続けることが大切です。

一方で、炎症が強い時期や腸に狭窄がある場合には、食事内容の調整が必要になることがあります。

特に狭窄がある方では、食物繊維の多い食品などが症状に影響する場合があるため、個別に相談することが重要です。

また、体重減少や栄養不足がある場合には、必要な栄養を十分に補うことも治療の一部になります。

自己判断で食べられるものを大幅に減らすのではなく、病状に応じて調整していきましょう。

症状がなくても、定期的な検査は必要?

クローン病では、下痢や腹痛などの症状が落ち着いていても、腸に炎症が残っている場合があります。

そのため、症状だけでなく、血液検査や便中カルプロテクチン、内視鏡検査、画像検査などを組み合わせて病状を評価します。

特に小腸に病変がある方では、大腸カメラだけでは十分に評価できない場合もあります。

また、炎症が長く続いている方では、病変の範囲や経過に応じて、大腸がんなどの合併症にも注意が必要です。

症状がないことと、腸の炎症が完全に治まっていることは、必ずしも同じではありません。

自己判断で薬を中止せず、主治医と相談しながら治療を続けることが大切です。

まとめ:クローン病は早期診断と継続的な治療が大切

クローン病は、小腸や大腸を中心に、消化管に慢性的な炎症が起こる病気です。

下痢や腹痛、体重減少などの症状がみられるほか、痔ろうなどの肛門症状がきっかけで発見されることもあります。

特に覚えておいていただきたいのは、次の3点です。

  • クローン病は、下痢や腹痛だけでなく、体重減少や痔ろうなどがきっかけで見つかることがあります。
  • 大腸だけでなく小腸にも炎症が起こるため、必要に応じて小腸の検査も行います。
  • 症状が落ち着いていても炎症が残ることがあり、継続的な治療と検査が重要です。

前田内科消化器科では、大学病院で炎症性腸疾患(IBD)の診療に携わってきた、日本炎症性腸疾患学会認定IBD専門医が、クローン病に関するご相談に対応しています。

下痢や腹痛が長く続いている方、クローン病と診断されている方で病状や治療について気になることがある方は、お気軽にご相談ください。

なお、病状によっては、専門的な画像検査や入院治療などが可能な医療機関と連携して診療を行います。


参考資料

  1. 難病情報センター「クローン病(指定難病96)」
  2. 厚生労働科学研究費補助金 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和7年度改訂版)』
  3. 日本消化器病学会『炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版)』
  4. Turner D, et al. STRIDE-II: An Update on the Selecting Therapeutic Targets in Inflammatory Bowel Disease (STRIDE) Initiative of the International Organization for the Study of IBD (IOIBD). Gastroenterology. 2021;160:1570–1583.